パンはもはや、日本の食卓に欠かせない食材のひとつといってよいでしょう。
ご近所のパン屋さんでパンが手軽に購入できるご時世ですが、ヘルシーで美味しいパンを自宅で作りたいと思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、パンを自宅で作る、さらに天然酵母も自家製となると、ハードルの高さを感じてしまうことも事実です。
自宅で作るパン、特に天然酵母のパンは、独特の美味しさがあると同時に、天然酵母を使うことによるメリットがたくさんあります。
パンの初心者のかたもぜひ挑戦していただきたい天然酵母のパン作り、その魅力をお伝えしたいと思います。
パンができる仕組みと天然酵母
料理やお菓子作りのための便利なツールがあふれている昨今ですが、自家製のパン作りは難しそうと感じている方も多いのではないでしょうか?
失敗してしまったら、費やした手間や時間がもったいない。
そう思うとなかなか手が出ないかもしれません。
まずはパン作りの基本として、その仕組みと天然酵母についてご説明いたします。
パンが膨らむ構造
パンの食感は、ふわふわであったり歯ごたえがあったり、種類によってさまざまです。実際、パンは長い歴史の中で、それぞれの地域に密着した独自の発展をしてきました。
しかし私たちが日常的に食しているパンの大半に共通していることは、膨らみがあるという点です。
この膨らみはどうやって生まれるのでしょうか?
パンを作る工程は、基本的にこのようになっています。
第1次発酵→ガス抜き→分割とまとめ→第二次発酵→成形→焼成
酵母菌やイーストは、ガス抜きの段階で活発な発酵を始めます。
この発酵によって弾力やねばりが生まれ、さらに細かな気泡が密に発生します。この気泡が、焼成によって大きく膨らんで、ふっくらとしたパンができあがるというわけです。
そもそも酵母ってなに?
ところで、パンを作るために必要な酵母とはいったいなんでしょうか?
パンの歴史をたどってみると、麦の粒食から粥食へ、無発酵の平焼きパンから膨らみのある酵母パンへという段階を経たといわれています。
膨らみのある美味しいパンに大切な要素「酵母」は、菌類のひとつです。
通常は単細胞でありながら、分裂や出芽によって増える菌を酵母菌と呼びます。酵母菌は種類も多いので、パンに使われる酵母を説明いたします。
身近なところで酵母の性質を使用したものには、パンのほかにアルコールがあります。ワインなどに使われる酵母は、醸造向きの性質を持っているのです。
パンに使われる酵母の特徴は、発酵に伴って炭酸ガスを生成するという点にあります。これが、パンを膨らませる力となっているのです。
酵母と聞くと、「購入するもの」というイメージがありますが、実は酵母は自然界に多数存在しています。糖分を含むフルーツや野菜は、酵母の分離源なのです。
天然酵母をとイースト菌の違い
それでは、天然酵母とイースト菌の違いとはなんでしょうか?
実は、天然酵母もイースト菌も、先に紹介した酵母菌としては同じ種類に属しています。
呼び名の違いは、その生成過程にあります。
一般的にパンを作るときに使用する市販のイースト菌は、大麦や小麦、トウモロコシや廃糖蜜などの食材を原料にして、培養していきます。こうして出来上がるのが、生イーストです。
市販のイーストはドライイーストと呼ばれて乾燥されているものが多いのですが、これは低温で乾燥させたものが商品化されているのです。
市販のドライイーストは培養の際に化学物質を使用します。そのため、独特のにおいがあり、これを嫌う人は少なくありません。
いっぽう天然酵母は、こうした化学物質は使用しないで作ったものを指します。酵母の増殖を化学物質に頼らず、自然に任せてゆっくりと行うのが特徴です。
ですから自宅で作る酵母菌はまさに、天然酵母の最たるものといってよいでしょう。
天然酵母を使うメリットとは
天然酵母を作るメリットとはなんでしょうか?
自宅で酵母菌から作ることはもちろん、時間や手間がかかります。
しかし、自家製の天然酵母には添加物が含まれていません。これは非常にヘルシーなパンを作る大切な要素となってくれます。
また発酵時間がかかることが多いため、ゆっくりと熟成し、出来上がったパンの味わいがまろやかになるというメリットがあります。
また、人工的な薬剤が入っていないためイースト菌にありがちな独特のにおいもなく、パンの原料となる小麦の滋味を実感できるのです。
体に優しい天然酵母はまた、国産の繊細な味わいの小麦との相性も良く、まさにメイド・イン・マイホームの幸福を体感できます。
多忙で時間に追われる現代人の私たちにとって、天然酵母から時間をかけてパンを作る時間は、精神的にも豊かな気分を体感させてくれます。
天然酵母の種類と作り方
自家製の天然酵母は、身近な食材で作ることができます。
料理初心者にとっても作りやすい天然酵母ももちろんあります。原料にする食材によって味わいも異なりますから、ぜひお好みの味わいを見つけてみてください。
代表的な天然酵母とその作り方をご紹介いたします。
天然酵母を作るための下準備
天然酵母を作るためには、まず蓋つきのガラス瓶が必要です。
ジャムの瓶のように金属製の蓋のタイプは、ガスが膨張しすぎる危険があるため、避けたほうがよいかもしれません。
天然酵母を作る作業の前にはよく手を洗い、ボウルや泡だて器など、使用する道具にはアルコールスプレーをして除菌しておきましょう。
ガラス瓶は、蓋と瓶、いずれも煮沸消毒をした後によく乾かし、アルコール消毒をします。
雑菌が入らないよう、くれぐれも気をつけましょう。
レーズン酵母
自家製天然酵母の中で最もメジャーなものが、レーズン酵母です。
使用するレーズンはオイルコーティングされてない、無漂白でオーガニックなものを使うのがおすすめです。酵母のアシストになる砂糖も、天然の質のよいものを選ぶと、パンの風味もよくなります。
レーズン酵母を作るために必要な材料は、こちらです。
ガラス瓶1ℓの場合
・有機レーズン 瓶の1/3~1/2程度
・水 瓶の8割程度
・砂糖 大さじ1~2
作り方
ガラス瓶にレーズン、水、砂糖を入れる。
ガラス瓶を26℃~30℃の環境に置いておきます。
1日1回程度、瓶の蓋を開けて、新鮮な空気を入れる。
この作業のあと5日から7日後には、瓶の中にシュワシュワとシャンパンの泡のようなものが発生します。この時の香りは、フルーティーで甘い感じです。
1週間を過ぎても泡が立たなかったり、異臭がする場合は、天然酵母の工程が上手くいっていないことになります。
発泡が確認され、瓶の底に白い粉のようなもの、澱が出たら、瓶を冷蔵庫に移動させます。
この状態で、通常は数か月保存ができます。冷蔵庫に移動後は、中身をかき混ぜる必要はありません。
発泡が認められて、発酵力があるうちに天然酵母は使うようにしましょう。
ヨーグルト酵母
ヨーグルトを使った天然酵母も、自宅でぜひトライしたいもののひとつです。
天然酵母を作る前の工程は、レーズンの場合と変わりません。
ヨーグルトの天然酵母を作るために必要な材料は、こちらです。
・プレーンヨーグルト 瓶の1/3程度
・水 瓶の8割程度
・砂糖 大さじ1~2
作業工程は、レーズン酵母の場合と変わりません。
煮沸消毒したガラス瓶に上記の材料を入れよく混ぜ、26℃~30℃の環境に置きます。
1日1回程度、蓋を開けて、新鮮な空気を入れて、数日後に発泡してきたら冷蔵庫へ移動。
天然酵母が完成します。
フルーツ酵母
自宅に常備している食材で簡単にできる天然酵母といえば、フルーツ酵母です。
季節のフルーツを原料として使うことで、香りの良い酵母を楽しむことが出来ます。
フルーツを使って酵母を起こす場合は、個体差があるので、出来るだけ新鮮でオーガニックのものを選ぶと良いでしょう。
どんなフルーツでも酵母は起きますが、酵素を多く含むフルーツ(パイナップル、キウイなど)は、パン作りには向きませんので、気をつけてください。
・フルーツ 瓶の1/3~1/2程度
・水 瓶の8割程度
・砂糖 大さじ1~3(フルーツの糖分により変わります)
作る手順は、上述したほかの天然酵母とかわりません。
煮沸消毒をしたガラス瓶に、適当な大きさに切ったフルーツと砂糖、水を加えて26℃~30℃くらいの環境に置きます。数日で発砲し、よい香りがしてきたら酵母は完成。
フルーツの季節によっては、温度設定が難しい場合もあります。温度機能がついているオーブンや、ヨーグルトメーカーを活用すると、数日で天然酵母ができます。
できた天然酵母は、冷蔵庫で保管しましょう。
酒種酵母
これまでご紹介した天然酵母には、はちみつや砂糖が入っていました。
レーズンやフルーツの酵母が増殖するうえで栄養となるのが砂糖とすれば、酒種酵母の場合は米に含まれる糖分によって酵母が増えていくのです。
そのため、酒種酵母を作るために必要なのは、米、ご飯、米麹、そして水です。
日本の伝統的な酒を造る技術が応用されている酒種酵母は、実は作るのがそれほど簡単ではありませんので、専門家の知識をもとに、トライしてみてください。
市販の天然酵母
自家製天然酵母から作るパンの美味しさは格別。しかし「市販のもの=天然ではない」ということではありません。
市販のものでも、天然酵母をうたっている商品はいくつかありますのて、いくつかの例をご紹介いたします。
・白神こだま酵母(世界自然遺産白神山地で作られている酵母)
・とかち野酵母(帯広畜産大学と農研機構によって北海道の植物を使って開発された酵母)
・パネトーネマザー酵母北(イタリアのコモ湖周辺で数世紀をかけて伝えられてきた酵母)
これらの天然酵母は、酵母の性質が異なるため扱いも変わってきます。
天然酵母にはそれぞれ癖や特徴があるため、使用する酵母でパンの味も変わってくるのです。
好みのパンを一から作りたい場合は、天然酵母も自家製であることが好ましいのは、自明の理というわけです。
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あらゆるレシピがインターネット上で公開されている昨今。
でもお料理やお菓子作りを基礎から、そして安全に学ぶためには、実際に先生に会い、フェイストゥーフェイスで習うのが一番です。
自家製天然酵母から作るパン、初心者にはいかにも難しそうで、トライすることを躊躇している方もいらっしゃるのではないでしょうか?
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他では見られないオリジナルレシピで、より健康的でより美味しいパンやスイーツをご堪能いただけることでしょう。
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酵母育てからの家庭で出来る発幸パン教室
参照元:
小学館日本大百科全書(酵母・イースト)
平凡社世界大百科事典(酵母・パン)
京都「CHIPPRUSON」の天然酵母パン 初めてでもおいしく焼ける 斉藤ちえ著 世界文化社刊
プレゼントしたくなる おしゃれな天然酵母パン 高橋貴子著 アトリエリブラ刊
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